風と香りの中で 42

「理沙、如何したのよ 智と何かあったの?」
弥生は、理沙の後から小走りで追いかけたずねたが、
「やよには、関係ないことなの!」まだその、気の高振りが残っていたのか、
その言葉はきつく弥生は、余計と気になってしまった。

「もう、私と、智とは何の関係もない、唯のボーイフレンドだよ、
でも、りさは、いつまでも友達だもの、りさの、あんな態度みたこともないし、
心配なの、何があったの?」
弥生は、下駄箱の前でりさが、上履きに替えている横で尋ねていた。

「今度、話す。多分、今日は呼び出しがあると思うし・・・。」
りさは、別にやけになっていた訳でもない、
智彦の顔を見たとたん、あのとき知る人も居なく寂しい思いをした悲しみと置き去りにされた心が、
そして、清瀬澄江と出会い考えたくもない答えを澄江が教えてくれたときの、なんとも自分が惨めに思えたのだった。

その気持ちが、りさの隠れた気性を現した。
真理子は、「りさっち、今日 呼び出しにあうって事は、判ってたの?」弥生の、横から尋ねた。
「そうだよ、いいの・・・。今日は、ね」と、理沙は、自分で納得しながらいって、さっさっと行ってしまった。
残された弥生と、真理子に皆が集まってきて、中の誰かが「変わるもんなのね!」
さらに、事情も知らない人たちの声はまちまちだった。

「振られた、腹いせ」「騙されたのかなぁ」「何か、されたとか・・・。」と、
下駄箱の前では理沙の事で賑やかな一大事にもなった。

智彦は、平手打ちの痛みより胸の痛みのほうがきつかった。
理沙が、あんなに怒っているとは知らなかったのと、
騙した事の、罪悪感がこんな形になって帰ってくることは、思ってもいなかったのだ、
しかし、もっと重大な智彦自身の人生をも変えてしまう事があるとは、この時は、誰も知る由もなかった。

「だから、ちゃんと行かなかったから、連れて帰って来て、その時謝ってれば良かったんだろうに、大山が悪いよ。」
と仲間の一人が呟くように言った。
「・・・・・。」智彦は、何も言わずに校舎にはいって行った。