風と香りの中で 16

駐車場から、両手一杯に荷物を持った、星一の後から可奈は付いて来てた。
「ひとつ、持とうか」と近付くと左手に可奈は、手を掛けた。
「いいよ!」と小さく振り払った袋の中からレモンが、1つ転げ落ちた。

「あっ!」慌てて拾い上げるとそのまま、鼻に近付け良い匂いと息を吸って、星一のの鼻にも近付けた。
「良い匂いでしょ」と言って、微笑んだ。

「私、好きだなぁ、この香り、酸味の利いたすっぱい匂いが、何とかの味とか言うんだよね」と、
星一に尋ねたが、「知らない、何それ?」「ふーん・・・!」可奈は、星一の顔を覗きこんだ。

いよいよだ!家の前迄来ると、星一は、初めて家族にに会わせる彼女を、
家の者はどんな風に向かへるのかと、不安と心配とが、一気に押し寄せてきた。

「ここ!」と可奈は、入って行くと「こんにちわー、ただいま」と、
まさに女の子らしく何の躊躇もせず玄関の扉を開けた。
「おい!」と、止める間もなく一瞬の事だった。

中から母親が「あら!」と出て来て、
うれしそうに2人を見て「可奈さんね、良く来てくれたね、さあ,入って外は寒かったでしょう」
そー言って中に招き入れるとリビングの方に消えていった。

星一は、両手に荷物を持ったまま、まるで悪戯っ子が立たされているかのように玄関先に呆然として立ち尽くしてた。

「あはは」と妹の瑠璃子が笑いながら近付き、
「ハイ!」と手を出し荷物を1つ受け取って「お兄ちゃん、とうとう連れてきたんだね、今まで一度も連れて来なかったのにね」
そお言ってキッチンの方に行ってしまった。

星一は、クリスマスより一大行事になってないかと思いながらキッチンに行って、
荷物を置くと、すぐ、リビングに入っていった。

すでに可奈は、ソファーに座っていて「あっ!これ」と先程のレモンをバックから取り出し、星一に渡した。
星一は、そのままテーブルの上に置いた。

すると、部屋中に甘酸っぱい香りが漂い、なんて、そんなドラマみたいな事もなく。
可奈が、「やさしい、お母さんね」と微笑んだが、星一は、「ん!、お母さん、おかしいよそれ」と可奈の、横に座った。
「なんで?」すかさず返した。

「だってそうだろ、まだ、身内でもないのに・・・。」
「だって、せいちゃんのお母さんでしょ」
「そうだよ、可奈の親ではないよな」星一は、無表情で可奈を見た。

「じゃー、なんて呼べばいいの?」と星一の返事を待った。
「んー!」と眉間に皺を寄せソファーに持たれかけ、天井を見付め考えてると母親が、
2人の会話が聞こえていたのだろう「どうしたの?」と、入って来て可奈にエプロンを渡した。

何でも言いやと、星一は、自分の部屋に行ってしまった。
この状況まずくないか?可奈を連れてきた事を、少し後悔しながら、ベットに横になると、
いつの間にか眠ってしまい、暗い闇の中から聞こえてきたチャリン・チャリンと金属音が響き、
キラリと光るスプーンが1つ目に付くと、そこにあのウエイトレスが立っていた。

満面の笑みを浮かべ、白く綺麗な手がスッーと差し伸べられてきた。
自分の鼓動が大きく聞こえるくらい、不安と、ときめきと、喜びが何故か、自然にその手をとると、
確かに感じた感触で目が覚めると可奈が、ベットの横で星一の手を握っていた。