弥生達は、昼前に目的地に到着した。
重くのしかかっている雲が、その全貌の半分も覆い隠し「お姉ちゃん、何処に、富士山が見えるの?」
と窓越しからきょろきょろと、辺りを探していた
「今日は、見えないみたいね。」と弥生が言って「雨が降りそうだから、無理だよ」と理沙が続けた。
「残念だけど、またくればいい」坊主頭の男は、次に誘い出す口実を植えつけ、
先に見える河口湖の駐車場を見ながらそう答えた。
駐車場に入り、狭い車から解放された3人は、
冷たい空気と目の前の湖の綺麗な景色に暫くは無言になった。
食事でもしようかと坊主頭の男は、道路を隔てた建物を指さしながらそういった。
「ああ!」と狐目の男は、まだ起き切ってないさらに細くなった目を擦りながら答え、
3人もそれぞれに返事をした。
食事の後は、ただひたすら車を走らせる形になったのも、
近くにある遊園地にでも行くかと聞かれ3人が「行かない!」と答えたからだ、
もっとも、とてもこの2人の男が遊園地なんて殻でもなかったし、
弥生も、理沙も自分たちと男2人が何かに乗ってなんて、とても絵にもならないと思った。
考えるだけでも笑ってしまいそうなのを、男達が知ったら、きっと悲しむのだろうなんてことさえ思ったのだった。
そして、弥生は、早く帰りたい気持ちの方が強く、暫く窓の外を見つめ黙ったままでいると、
また、湖が見えてきたのだった。
この辺りはそうだよね、富士五湖があったんだわと、胸の中で呟いた。
「何か皆、静かになったよな!」と、
ひたすら前を見てる坊主頭の男は「つまんない?」と尋ねたが、
さすがに「はい!」何て、答えれる訳もなく「そんなこと、ないです」と弥生が答えると、
理沙が、弥生を見えないところで2・3回小さく叩いた。
「あんまし、俺達の事聞かないよね?興味がないのかな?」はい!」
とこれもそんなことは言えないので「興味とか、・・・何を話せばいいのか・・・。」と少し困った弥生に
「年齢とか、趣味とか、何かあるよな・・・。」
「うん、じゃあ年は幾つなんですか?」とかすみが、それに合わせて尋ねた。
「じゃあ・・・ってそれは・・。」言いかけた坊主頭の男の言葉を遮って狐目の男が、
かすみちゃんは、まだ高1だから仕方ないよ、と庇う形となったが、
かすみは、何も気にせず幾つなんですかと、又、尋ねた。
すると狐目の男が幾つに見えるかと、良く聞く質問をして、後ろを振り返って聞いた。
30歳と、かすみが即答すると、坊主頭の男が「うそだろー」と情けない声で嘆いた。
「幾つですか?」理沙が、同じ事を聞いたが「30歳に見える?」と坊主頭の男が尋ね返した。
20代後半くらいと弥生が言ったのを狐目の男が一緒だよ20後半も30もと投げやりで言いながら、
そんな老けて見えるのかよと思い「22歳だよ!まだね」理沙は、うそー!と少し大袈裟に言って、
そうなんですかと弥生は、どうでもよさそうに答えた。
すると、かすみが「若いーね!」と少し高い声で叫ぶように言うと
「そうだろ!若いだろ、全然かすみちゃんとも合うんだよ」狐目の男は、売り込んだつもりだったが、
かすみは、指折りしながら5歳は離れすぎだなぁと呟くと、
狐目の男は女性の方が同世代の男とだと精神年齢が上になるから5歳位がちょうどいいんだよと返した。
「ふーん!」と、かすみは納得したのか頷いた。
元気をなくした坊主頭の男は、黙ったまま山中湖を横目に見ながら右折して、
御殿場へと向かい東名高速を目指して走り続けた。