風と香りの中で  8

「連れて来なさいよ、会ってみたいからね、せいが彼女の話なんて初めてだったし学生時代も居たんでしょ。
も一度も、紹介してくれなかったでしょ。まあ、せいが気に入った娘だから・・・。」
テーブルを拭きながら、少しうれしそうだった。

星一は、子供の頃から良く母親と会話してたが、マザコンではない。
賑やかで、気さくな家族の中で育てられたからなのか、そこそこの話はした。
で、何故か可奈と付き合った時にだけ、母親に話したのだ。
それは、星一にも判らなかった心境だった。

「だから・・・?」星一は、尋ね返した。
「かあさんは、心配はしてないけどね。」と、星一を見て微笑んだ。

「心配ってなんだよ?」と思いながら、
やはり、息子の相手は母親ながら会っておきたい気持ちはあるのだろうか、
品定め?どうゆうつもりかは星一には判らなかった。
「普通の娘だから」そー言ってキッチンを出た。

相手が、会いたくなければそれでいい、まだ、そこまでの気持ちも星一にはなかった。
が、数日後、可奈の返事は即答だった。

「だから、クリスマス家に来なって、お袋が可奈に合いたいってさ。」
「行く、行くよ、仕事は休みだと思う。私、まだ見習いだし、お母さんに会っておきたいしね」
「おかあさん・・・。?」星一は、首をかしげた。

「あー、気合入るなぁー」、受話器の向こうの可奈の顔が浮かんだ。
「そんなに、気合入れなくたっていいからな、うちの家族結構気さくだからさぁ」と、
暫く近況などのとりとめもない話をして、受話器を置いた。

そして、午後11時過ぎにすぐさま、弘幸に電話して、出かける約束をした。
「いつかの、喫茶店にしよう。」と弘幸が決める。と星一は、車を走らせた。

「そっか!親に合わせるのか!まあ、悪くはないけど・・・。」とその後の言葉は言わなかった。
「まずい!か?」星一は、弘幸の言葉が何か引っ掛った。

弘幸は、既に一緒になると決めた相手が居る、
そんなに簡単に決めたわけでもなく一代決心はあったようだ。

以前と同じ路上に車を止め、二人は同時に降りると「せいちゃん、で、結婚決めたのか?」と、
冷たい風が吹きぬける中で、弘幸は大きな声で尋ねる。

「まさか?」少し迷いながら、星一はつぶやくように言って、歩き始めた。
「もしかしたら・・・。それも有りかぁ」弘幸には聞こえない、心の中で呟いた。