風と香りの中で 22

理沙と澄江は、テーブルいっぱいになるくらいの、料理を運んでいた。
バイキングとは、何とも都合が良く、食べたい物を食べるだけ持ってこればいい、
2人は妙にはしゃぎながら、数時間前に知り合ったとは思えないくらい息が合っていた。

人とは不思議なもので、凄い対人症か人見知りの性格でなければ、知り合いもいない、
同じ空気の環境の中では打ち解けてしまうのかもしれない。

理沙より澄江は、それなりに社会に揉まれ人生経験の先輩でもあった
「せやから、一緒に来る事になってたんやろ、それが来いへんってことは、
りさやんには気があらへんってことや」と、唐揚げを頬張りながら言った。

「うーん!」理沙は、取り掛けたポテトフライを止めて、小さく唸った。
「せやろ、好いてはったら絶対一緒に来るしな、こんなに待たせへんて・・・。」
続け様に唐揚げを食べて「これ美味しいで」と理沙に進めた。

そして、ビールを飲むとそれはまるで、大阪のおっさんが若い者に説教でもしてるようにさえ見えた。

理沙は、その言葉も信じたくなかった「きっと、きっと何か別の用事でも出来たのかもしれないですよ。」
自分に言い聞かせるように言ったそんな理沙を、澄江は何て健気で純粋なのかと、
自分もそう純粋に信じてきたそんな時があった事を思い浮かべると、何だかしんみりとしてしまう、
しかし澄江は信じた全てではないが失恋も、裏切りも辛い経験を重ねていた。

理沙に、何を訴えようとしてるのか判らないが、
でも真実を知らなくては傷つくのは自分自身なのだからと
「せやったら、何で連絡もして来いへんのや、大切な相手やと思うとったら、
嫌われんように心配させへんで、男ってそんなもんや・・・。」

澄江は、もう一口ビールを口にして続けた
「いい方に考えるのはエエ事や、でも男に関しては別や最初は優しいけどな、
豹変して別の顔を見せるようにもなる男も居るさかい、何でか判るか・・・
まあ、それはエエは」とまた一口飲むと、
煙草を取り出し吸い始めて、尚も続けた
「世の中には、りさやんに合ったエエ男はぎょうさん居るで、
そんな、誘っておいて来いへん男なんて最低やで、ほんま・・・」
澄江は、理沙に遠い自分を重ねていた。

人は、環境と関わった人に寄って変わって行ってしまう、
それは性格でなくきっと生き方がだろう。

理沙は、澄江が話すその様子を見ながら何か、暖かいものを受け取った。
「澄江さん、何か・・・そうですよね。信じたくない事実が真実なんですよね?」
理沙は、澄江と出会ったことを、この時はうれしく思った。

が、理沙の向かう方向が、この時すでに決められて行った事は、澄江も理沙も判らなかった
「りさやん、理解出来てるやん」と澄江は、理沙に煙草を進めた。

2人は更に息が合っていき、いつの間にか理沙は、
煙草を吸いながらオレンジジュ-スの様なカクテルとアルコールも飲んでいた。

2人の楽しそうな話し声は、周りの人達も楽しくさせていた。
パーティが終わると2人は、寒い夜の繁華街へと消えていった。