風と香りの中で 11

暫くすると、人波の中から現れた智彦に、小さく手を振って微笑んだ。
「ごめんよ!」時計を、チラリと見た。

「平気だよ!何時間でも待つよ智君なら・・ね!」
うれしさが滲み出るくらいの表情で、また、微笑んむと「どれくらい振り?」と、
智彦を見て答えを悪戯ぽい顔して待つ、理沙に「何のことだ!」と言わんばかりの、
顔をして首を傾げた。

こうして二人で出掛けるのは、初めてではなかったが智彦は忘れてしまっていたが、
理沙は、まるで昨日の事のように覚えていたのだ。

「何時だったっけ?」と言いながら歩き始めた智彦について、
理沙も歩き始め「やよが、一日だけ入院したときよ。」
「あっそうだ!そうだ」何かを思い出した時のように
「そうだよなあ!なんで入院したんだっけ?」と、
思いだそうとしてるのか立ち止まって考えた。

「知らない!」
ちょっと気に入らないな気分で答えたが
「あれからだよな。仲良くなって行ったのは・・・。
小さくて、どう見ても高校生には見えなくてな」と智彦は、まだ続けて話してた。

「もおいいよ!」言葉になってなく、
一人ゆっくり歩き始めた理沙の横に並んで歩きながら「怖い!って言われたよ」 
「えっ!」今度は、理沙が立ち止まった。

後ろから来ていた人たちは、思わず流れが止まった川のように、
慌てて横をすり抜けて行った中で、
「それが、別れた理由なの?」「わかんない、何が怖いのか。」智彦は、歩き始めた。

「あいつ、何かしっかりしてるよ。僕なんかよりズっーと大人だし、で、可愛いしな。」
「いいよ、もう!」理沙は、だんだん苛々してきてた。
理沙は、智彦とは中学からの知り合いだった。

だからなのか、いつか付き合うだろうと思っていたのは、理沙の方だけで、
智彦は、弥生と知り合って一年後に付き合う事となった時の、
理沙の気持ちは誰にもわからなかっただろう。

でも、今、弥生と別れてしまった智彦の事は、やっぱり自分のほうが判ってるんだと、
やよと別れ淋しさもあって・・・。

理沙は、楽しい気分だった数分前の気分から落ちていきかけたが、
「智彦のばーか!」と思いっきり心の中で叫び顔を上げると、
智彦の手を取り歩き始めた。理沙も、しっかり大人になりかけてた。

いきなり手を取られ、びっくりしながらも、それにつられ横に並び、
人波の中に手を繋いだまま二人は消えて行った。