風と香りの中で 44

昨夜から降り出した雨は、止む事も無く降り続けていた。

雨の成人式になったと、朝のニュースではどのチャンネルも全国の様子を流してた
今年の成人数は198万人だとそれが多いのか少ないのかなんて、星一にはどうでもよかった
どうやら雨が降ってるのはこの地域だけのようで、寒い一日になるなと思いながら大森が告白する日だと、
その結果が楽しみでもあった。
「よし!」と昨日の内に買っておいた、木材とそれを削る道具を袋から取り出した。

何の心境からか星一は、木彫りを始める事にしていた。
それは、加奈の影響も有ったのか何かを作る事それはいいことだと、
それで選んだ木彫りは、学生時代に美術の時間に作くった木彫りの物入れを褒められ長い事教室に展示されてた、
それがそのままの部屋にある机に置いてありその中には、加奈から貰った人形も入っている。

結局加奈に電話してもどうやら忙しく中々繋がらない、
寮では、電話は寮生皆の共有だから電話の相手も判らず加奈の呼び出しもうまく行かない。

一度、加奈から電話が有ったが星一は、留守にしていた。
「すれ違いが多いなー」星一は、これもと・・・。
勝手な自分の都合のいい判断して納得させていたのかもしれない
「さて、何を彫るか」と、モデルになる対象物を探しこれがいいなと、
写真立ての中に写っている柴犬を手にとって見た。

星一が、まだ幼い時、小早川家の一員であったナナは、家族に良くなついていた。

写真の中には、星一の横にきりっとした姿勢で座っている、小さな星一はその横で笑っていた。
何故だか、それを父親のアルバムで見つけたとき、その一枚だけ取り外し飾っていたのだ。

「さて、何処から削る!」と呟きながら最初の一彫りするとその後はスムーズに彫れて行ったが、
途中経過は一人大笑いし「何だこれは!」とベットに横たわってしまった。

が、眠る事も無く、加奈に会えないならば、次に手紙を書くしかないとその内容を考えた。

木彫りもこの手紙の苦手な星一が、気晴らしにホームセンターで、
便箋を買いに行ったときに決めた物だったから、
本題の手紙を今日仕上げないといけなかった。

苦手な物に目を背けるのは、多くの人たちの傾向だろう。
「なんて書けばいい!さよなら・・・。」あまりにもあっさりしすぎか、
「いろいろ、お世話になりました」なんか、やっぱりおかしいぞと、
星一は頭の中で、多くの言葉が巡るがしっくりこなかった。

考え過ぎでいつの間にか、眠りに入るまでに時間も掛からず目を閉じると同時に深い眠りに入って行った。