寒い冬の夕暮れ時
「あははは!」真理子は、大笑いしていた。
「そこまで、笑うのかよ今時の高校生は・・・。」
大森は、何か気分がすごーく悪かった。
真理子が、大笑いしてることじゃなく、いつも自分が何かしようとする度に、
自分が思っている通りに行かず何処か中途半端になってしまうことが、
大森は自分の運が悪いとは思うこともなく、自分を見つめると自分が嫌になっていた。
それは、自分にしか判らない弱さであり、何故、真実を聞かず沢田の言った言葉で、
撃沈した船の様に深い海の底に沈んでいかなくてはいけなかったのか。
情けなかった。
「ああーあ!」大森は、目の前に置かれたカレーライスを、おもむろに食べ始めた。
「それだけ、食欲もあれば、大丈夫だな。」沢田は、驚きながら呟いた。
大森は、目を閉じて顔を天井に向け何か考えているようなのを、
沢田は、真理子に、冷たいお絞りを要求して大森の顔に掛けるように指示して、
真理子もそれを受けて、大森の顔にすばやく掛けた。
「わー!冷てー!なにするんだよ」と慌ててお絞りを剥ぎ取りそこにいた真理子を見た。
「何するんだよー」と情けない声で言ったのを、2人は、又大笑いした。
「真理ちゃんは、今年、受かったら遠い地で独り暮らしするんだぞ。大人だよ・・・。」
「何が、言いたいんだ。」大森は、食いついた。
「そうよ、たった1回位駄目だたからって次、がんばるぞーってなんないの?」
「なるかー」と真理子が言ったことに返した。
そんなんじゃないんだ、駄目でもいいでも、自分は何も言えなかった、
たとえ隣に誰が居ようと彼氏かも判らない、幼馴染だったかもしれない、何も聞きだせず・・・。
そんな、気の弱い自分が本当に彼女のことを愛してますなんて言えるのか、
ちくしょー、と自分を責めた「真理ちゃん、大森を癒してやんなよ。」と、
沢田は、思っても居ないことを言って更に大森を追い込もうと考えた。
「無理、こんな弱虫の1人よがりの人の面倒はみれないわよ」
「おいおい!孝ちゃん何、言い出すんだ」と慌てた。
「てっきり、真理ちゃんと出会ったから、本当は告白を止めようと思ってたんじゃないのか」と沢田は、釜賭けをした。
「馬鹿な事を・・・。」人の目に映る心は、意外と当たってたりするもんだが、
大森は、無意識の内に真理子に気を引かれていたのかもしれない、
その純粋な気負いをしない女性が、いつの間にか仲良くなり自分でも気付かない自分がいるのかもしれない。
「私はねー、いつも一緒に来るあの人がタイプかなー!」
「誰!」大森が尋ねると「先輩の事だ」と沢田は、声が大きくなった。
「うそー!」と2人は揃って言った。
それは、意外な展開だぞ、との思いと、又撃沈かよと情けない思いが入っていた。
「うそ!」と真理子は、肩を窄めながら、舌を出して赤くなった顔に気付かずに、奥に言ってしまった。
驚きの顔をしたまま2人は、冷たい水を飲んだ。
日の暮れた。寒い夜に冷たい風が小さな渦を巻いて抜けていった。