風と香りの中で 62

星一は、広げた便箋を見て綺麗な字だなーと感心しながら腰掛けたベットの上で読み始めた。

星一さんへ、突然の事で大変驚きました。悲しんでるんじゃあないかと思ってるでしょうが、大丈夫だですよ^^
ただ、何故だろうと思う。私は、極度の人見知りなんでね。

ほんとよ、先輩からいい人が居るからと会ってみないって言われた時も、実は断っていたの。

私には、無理だから・・・。
初めての人と会ってましてや、話なんて出来る訳ないもの、でも会って良かったです小早川さんの話が面白く、
なんか私の人見知りの事判ってるみたいに気を使ってくれてる気がして、いい人で良かったとほっとしたの。

でも、付き合うとかは決めてなかったんですが・・・。
星一は、読みながら加奈のその冷静さに驚いたのと少し安心しながら、
加奈も一つ年下だけど大人だしなと、胸の中で呟き続きを読み始めた。
 
紹介してくれた先輩が大丈夫だって、私の事気に入ってくれてると言われて、
馬鹿だよね自分の事自分で判ってなくて、何がいけなかったのかさえ判らないんだもの、
小早川さんと、会うたびに好きになって行く自分が怖く、仕事してても会いたくて会う日がいつも楽しみだった。

家に呼んでくれたときも家族の人に会えば安心かなとか、
凄く緊張してたんだけど皆優しく良い御家族さんで・・・・。

私は、私は、馬鹿だよね。
小早川さんの考えてることも判らず気付かず浮かれちゃってたのかもしれないね、
だから、やっぱり私には無理なのよ・・・。
ごめんなさいね!小早川さんには、迷惑けちゃったのかな。

星一は、この辺りから文字が滲んでるのに気づくと、
なぜか急に胸が締め付けられる思いを感じベットに倒れかけ呆然と天井を見つめて、
女性との交際が何か、凄く重いものだと感じたのだ。

人一人の心の繋がりは確かに遊びなんかじゃない、同姓同士なら何も悩むこともないのにと
男と女とでは、何故、恋とか愛とかになっててしまうのか、
それがなければ別れなんてないんじゃないかと、判らない!特別の相手を見つける。

特別ってなんなんだ・・・。星一は、起き上がると再び読み始めた。
心配しないでね。心配なんかしてないよね、そんなに想い出もないけど、
もう会えなくなると思うと何だか悲しいね、やっぱり、私には・・・。

PS  クリスマスに家に呼んでくれてありがとうね、
あのひと時の想い出がきっと私を強くしてくれると思うの、
いつまで小早川さんの笑顔を忘れないか判らないけど、
元気でね、体に気をつけて、いつかまた縁があれば会えるといいなぁ、
では長い事、書いちゃってごめんなさい。

さよならはいいません。もう、ほんとうに会えない気がするから、わたしは、元気よ・・・。
                 1月25日 かなより

これで終わりか!どこまで強がって・・・。
と、何だか無性にその空しさの、全身にのしかかる感覚は、冬のどんよりと曇った空が、
低く立ち込める1人きりの時の中に居るようだった。

加奈、ごめんな!便箋の終わりの方の水に濡れ乾いた雫跡が、加奈の思いだったのだろう。

星一は、そんなことを思うと静かに涙が一筋流れた。
が、加奈に、これ以上の悲しみが訪れることなどこの時の2人には、判るはずもなかった。