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風と香りの中で 55

今日は、このまま帰った方が良さそうだ!東名に入ると坊主頭の男はそう思って。
真っ直ぐ帰る選択をした。

初めて一緒に出掛けて無理をすれば後がなくなる。
どうやら、あまり俺のことは気にもしてないところがあるし、
どうするせっかく見つけた、自分好みの女性を諦めれるか!どうすればいい・・・。
坊主頭の男も思春期を向かえ今、大人としての男として成長している。

異性に対してのジレンマを学生の時から引きずっている自分が、
弥生と出会い抑えきれない程の気持ちが、坊主頭の男を変えようとしていた。

「このまま帰れば、早い時間には戻れるよ。」と言ったのを、
狐目の男が如何したんだ、と顔をしながら坊主頭の男を見て、おっ!何か良い案でも考えたなと、
変に期待したのだが疲れた!からと、運転交代の為と少し休憩の為に次のサービスエリアに入ることを告げ、
座ってるだけに疲れていた3人は「はい」と頷いた。

大きなサービスエリアは、連休ともなると更に人が大勢である。 
駐車場に着くと弥生達3人は、揃って手洗いに向かった。

それを見つめながら「如何したんだよ、このまま帰るって何か、良い手でも思いついたのかよー!」
「やっぱり、始めから無理をして失敗したら元も子もないだろ。
慎重に行こう、あまり俺たちの事、好感良くない気がするし、友達からってことだってあるしな・・・。」

坊主頭の男は、フロントガラス越しに、行きかう人達を見ながら呟くように言った。

「んー!強引に行けば、付いて来るよって言ったのはお前だろ・・・。」
「まーな!、でも今日は無理だ、あの理沙ってのが居なければ予定通りに行くはずだったんだよな、
香月姉妹に既成事実を作れば、愛とか好きとかの気持ちなんて後から付いて来るもんよ、引くに引けなくなるからよ。
そうしたら、好きなんだって気持ちに持っていかないと自分が惨めになる、そう思うんじゃないか、
それは、純粋であればあるほど、そんな錯覚に陥ってしまうんだ、きっと何十年も先には、離婚率が増えるぞ」

「おお!何でそんなこと言えるんだ!」
「今の風潮では、一緒になりたかったら子供作っちゃえばいいぞなんて、言ってんの多いだろ、だからだよ・・・。
戻ってきたぞ!だから、次につなげる為に、今日はこのまま帰るぞ!」

「おお!判った、次回頼むわ」2人は、予定道理に行かなかったことを悔やみながらも、
次は、いけると本気でそう思っていた。

弥生達3人は、何も知らずに無邪気に楽しく話しては、笑っていた。
「富士山の、上の方は、やっぱり見えないね」と、
かすみは雲の掛かった日本一の山を麓から見上げる形となっている、
このサービスエリアから残念そうに呟いた。

そして、5人の乗った車は渋滞に巻き込まれることもなく、途中から振り出した雨は冷たく、明日の成人式まで降り続くと、
天気予報が告げている午後18時50分に、自分たちの住む町へと帰ってきた。

「疲れただろ!車の中ばかりじゃあな!」
「そんなことなかったよ、私、車乗ってるの好きだもの」とかすみは、
そのままの気持ちを言ったが、弥生は、何、言ってんのよと口には出さなかったが、
かすみを見ては仕方ないか。と思ったのだ。

「今日、バイト行くの・・・。?」と狐目の男が尋ねると「行かないです。」と弥生は答えた。

そして、車は朝と同じ所に無事に到着して3人は、順番に降りて坊主頭の男が、
弥生に近付くと右手を出して、握手を求め仕方なく弥生はそれに応じ握手をすると
「また、一緒に出掛けような」と坊主頭の男が頼んだ、弥生は、返事に困り声が出せないと「いいよな!約束だよ」と、
少しきついめに言われ「うーうん!」と小さく返事をした。

かすみちゃんも、またドライブに行こうなっと、狐目の男が声を掛けると、うん!と気軽に返事をした。

「今度は、2対2でな!」と狐目の男は続け念を押すように言った。弥生は返事をしなかった。

風と香りの中で 54

星一は、成人式で撃沈した、大森の結果も知らず、慣れない手紙を何度も書き直しながら夕食後から夢中で書いていた。

出来の良い久しぶりに帰って来ている兄、一樹に習っていたが、なんせ女性より勉強、仕事といった感じなので、
当然、別れの手紙なんかの見本にもならなかった。

「そうゆうのは、自分の気持ちで書くもんだよ、見本や習うことじゃないよ」と、てんで話しにならんかった。
「解ったよ、兄貴に聞いた自分が悪かった」そう言って部屋に籠って1時間が過ぎようとしていた。

拝啓、鈴木可奈様 
 この度は、折角縁が合って出会ったのですが、
どうも自分の心がおかしくて加奈のようにやさしい女性が、
自分のような何の取り柄もない男と、この先、生きてゆくことは凄く罪な気がします。

出会って4ヶ月が経ちますが、自分は何も加奈にしてあげられないことが心苦しくて、
今も、会うことさへ躊躇してしまうんだよ、
クリスマスの時の加奈の楽しそうな顔を見たとき、
正直、加奈を守っていける自信がなく、
きっと、悲しい思いをさせてしまうのではないかと、
それに加奈は、今、準看になって次は正看になって多くの人を救っていく使命があると思う・・・・。

星一はこうして、自分なりに書き綴って加奈を思い浮かべた。
書いてあることも星一の気持ちだったが、加奈と会った日に出会った女性から受けた衝撃は、
忘れる事も出来ずそんな気持ちのままでは加奈との付き合いも無理だと思った。

追伸  同封の雪の結晶のペンダントはアメジ・・・何とか言う赤い石で結晶の形を覆っているらしい、
加奈の誕生石だよな、僕からのプレゼントとは思わず大切にな、
そんなに高いものじゃないし、どうしてもいらないなら、捨てちゃってもいいよ。

ごめんよ、本当に・・・・。立派な看護婦に成って下さい。

と最後を締めくくって、星一は、自分の中では完璧だと思ったが、
それはとても一方的過ぎて、加奈の怒りさへ呼ぶような文面に気付かなかった。

慣れないことをした星一は、何か一仕事した感はあったが、
次第に湧き上がる空しさと、悲しみが何なのか判らなかった。

そして、雨が上がりその洗い流された後の冷え切った新鮮な空気を感じる為に外へ出て、
流れて行った雲の後からは、1段と輝きを放っているかのように、数えきれない星を見上げオリオン座を探した。

冷たい風がさらに冷たく感じたのは体の中をすり抜けた、さよならの言葉だった。

風と香りの中で 53

弥生達は、昼前に目的地に到着した。
重くのしかかっている雲が、その全貌の半分も覆い隠し「お姉ちゃん、何処に、富士山が見えるの?」
と窓越しからきょろきょろと、辺りを探していた
「今日は、見えないみたいね。」と弥生が言って「雨が降りそうだから、無理だよ」と理沙が続けた。

「残念だけど、またくればいい」坊主頭の男は、次に誘い出す口実を植えつけ、
先に見える河口湖の駐車場を見ながらそう答えた。
駐車場に入り、狭い車から解放された3人は、
冷たい空気と目の前の湖の綺麗な景色に暫くは無言になった。

食事でもしようかと坊主頭の男は、道路を隔てた建物を指さしながらそういった。
「ああ!」と狐目の男は、まだ起き切ってないさらに細くなった目を擦りながら答え、
3人もそれぞれに返事をした。

食事の後は、ただひたすら車を走らせる形になったのも、
近くにある遊園地にでも行くかと聞かれ3人が「行かない!」と答えたからだ、
もっとも、とてもこの2人の男が遊園地なんて殻でもなかったし、
弥生も、理沙も自分たちと男2人が何かに乗ってなんて、とても絵にもならないと思った。

考えるだけでも笑ってしまいそうなのを、男達が知ったら、きっと悲しむのだろうなんてことさえ思ったのだった。

そして、弥生は、早く帰りたい気持ちの方が強く、暫く窓の外を見つめ黙ったままでいると、
また、湖が見えてきたのだった。

この辺りはそうだよね、富士五湖があったんだわと、胸の中で呟いた。
「何か皆、静かになったよな!」と、
ひたすら前を見てる坊主頭の男は「つまんない?」と尋ねたが、
さすがに「はい!」何て、答えれる訳もなく「そんなこと、ないです」と弥生が答えると、
理沙が、弥生を見えないところで2・3回小さく叩いた。

「あんまし、俺達の事聞かないよね?興味がないのかな?」はい!」
とこれもそんなことは言えないので「興味とか、・・・何を話せばいいのか・・・。」と少し困った弥生に
「年齢とか、趣味とか、何かあるよな・・・。」
「うん、じゃあ年は幾つなんですか?」とかすみが、それに合わせて尋ねた。

「じゃあ・・・ってそれは・・。」言いかけた坊主頭の男の言葉を遮って狐目の男が、
かすみちゃんは、まだ高1だから仕方ないよ、と庇う形となったが、
かすみは、何も気にせず幾つなんですかと、又、尋ねた。

すると狐目の男が幾つに見えるかと、良く聞く質問をして、後ろを振り返って聞いた。
30歳と、かすみが即答すると、坊主頭の男が「うそだろー」と情けない声で嘆いた。

「幾つですか?」理沙が、同じ事を聞いたが「30歳に見える?」と坊主頭の男が尋ね返した。
20代後半くらいと弥生が言ったのを狐目の男が一緒だよ20後半も30もと投げやりで言いながら、
そんな老けて見えるのかよと思い「22歳だよ!まだね」理沙は、うそー!と少し大袈裟に言って、
そうなんですかと弥生は、どうでもよさそうに答えた。

すると、かすみが「若いーね!」と少し高い声で叫ぶように言うと
「そうだろ!若いだろ、全然かすみちゃんとも合うんだよ」狐目の男は、売り込んだつもりだったが、
かすみは、指折りしながら5歳は離れすぎだなぁと呟くと、
狐目の男は女性の方が同世代の男とだと精神年齢が上になるから5歳位がちょうどいいんだよと返した。

「ふーん!」と、かすみは納得したのか頷いた。
元気をなくした坊主頭の男は、黙ったまま山中湖を横目に見ながら右折して、
御殿場へと向かい東名高速を目指して走り続けた。

風と香りの中で 52

加奈は、星一から一度電話があったことを聞いて、
電話を掛けたが小早川家には誰もいなかったのか繋がる事もなく呼び出し音だけが寂しく聞こえた。

今の、ように通信技術が20年早く発達していたら、
この物語もきっともと早く進んで行くのだろうし、
内容も大きく変わっていくだろう。
でも、どれだけ技術や科学が発達しても、人の心は進歩しないだろう。

加奈はやっと出来た、星一の母親のストールを編み終えた。
いつでも渡せるように準備はしていたのだが、仕事の量は準看になってから多くなっていた。

星一に会いたい気持ちも充分にあったが、自分で選んだ道を真っ直ぐに見つめ、
自分が多くの人のために馴れればそれは、凄くうれしい事でもあったから今は、
恋愛どころじゃないのかな、などと時折思うこともあった。

加奈は、星一の人形を見ながら何故か涙が少し零れた。
冬の寒い夕刻の雨が降り始めた時に。

風と香りの中で 51

生憎の雨が、実は弥生にとってってはとても都合が良かった、
今日、出掛けることで一旦は、弥生なりの義理が果たせるのかなと思っていた。

普通の女性なら嫌な相手となら、どれだけ誘われても断れば其れで済むはずか、
相手が諦めるかで、その出会いは唯の通りすがりの赤の他人になって行くのが普通なのだが、
「彼氏いるの?」って聞かれた時に、「いないですよ」って答えてから、
その坊主頭の男は店に来るたびいろいろ聞いてきたのだ。

ついには妹のかすみのことまで聞き出すと、
狐目の男が妹に話しかけるようになったのだが、
なんせまだ高校1年の妹は、何でも答えた。
何も考えずに・・・。
その結果が、気乗りのしないドライブになってしまった。

が、理沙が一緒に来てくれたことは、大きな救いになっていた。
髪は染めたままで薄っすらと化粧をしていた理沙は、
弥生と同年代にはみえなかった。

狐目の男は、理沙を見た時から気に入ってしまった。
その質問攻めに、少しうんざりしていた。
話が途切れた時、弥生は冬休みの間に何があったのかズット気になってたことを聞いた。

理沙は、小さな声で大まかな事を話すと「ごめんね!」と呟いた。
前にいる、男たちにはハッキリとは聞こえなかったが、智彦と男の名前が出ると、
狐目の男がそれに反応したのか「そいつは彼氏なんか」と、
後ろを振り返り尋ね理沙の返事が気になった。

「どうだろう?」理沙は、無意識なのかこの場では、違うよなんて言わない方が言いと判断したのか
曖昧に答えると「何だよ、もったいぶるなよな!どうせ、同級生の男友達みたいなもんだろうに・・・。つまんないだろう!」

男の口調は、理沙をイラつかせた。
「おい!何言ってんだ!」と、坊主頭の男は、狐目の男にきつく言った。

ちょうどサービスエリアが見えて来たので、車はそのまま入って行った。

「ちょっと、休憩しよう!」と坊主頭の男は、車を止めると、弥生たち3人は、出て行った。

「何か、感じ悪いねあの目の細い人・・・。」理沙が言うと
「りささんが、男の人の名前を出したからじゃない?」と、
かすみは、見慣れない窓の外を見ていても飽きないくらい、遠くまで車で来たこともなかったのが、
尚更独り楽しんでたが、皆のやり取りは、ちゃんと聞いていたのだ。

「ごめんね!誘っちゃって」弥生は、理沙に言った
「友達だもの、やよが困ってる時は協力するよ、だから私に声を掛けてくれたんでしょ」と理沙は、弥生の肩を軽く叩いた。

「それにしてもなー?」と沢山の車が並んでるっ駐車場の方を見ながら呟いた。

「おい!もう少しやさしく接しろよ」と坊主頭の男は、
狐目の男に言うと「ついついよ、男の名前が出てきたんでよ・・・。」
狐目の男は少し気が短いところがあったようだが、
「頼むぞ、そんなに誘いに乗って来そうもないから、少しのチャンスでも大事なんだからな」
「ああ!」「あの、理沙って女は気が強そうだから辞めといた方がいいかも、妹でいいだろに」

「ああ!」今日は、計画は無理かも知れないが、次に繋げる為にも、紳士的にいかないとな。」
「ああ!」「知ってんだろ、集会に行った時のあのデブ野朗がいい女連れてたの、どうしてか知ってるか」
「知らねーよ」「まあいいや、でもな女性は変わるもんだって事をな」
坊主頭の男は女性に対して何か変な思い込みがあったようだった。

2人は、そんなやり取りを煙草を吸いながら話して車に戻ると、
何か買ってくるよと皆に聞いて独り行ってしまった。

「さっきは、どーも口調がきつくなっちゃって」と理沙達を見ながら誤った。
弥生と理沙は、噴出しそうになったのをこらえた。

坊主頭は、沢山の買い物をして戻ってきた。
理沙がいなかったら、ここは弥生と一緒に買いに行き、良い雰囲気を作る予定だったが、仕方なかった。

車は、本線へとスムーズに入って目的地に向かった。
明日の成人式を気にする事もなく・・・。