時と共に優しく 7

「よし!これでもう安心だよ!」
強志は、椋とくもを部屋に入れて、
くもと椋が横になれるようにタオルケットを敷いて
「家の親が、椋ちゃんの家に電話して事情を話したらいいってことでな、
くもと一緒にいればいいよ、
椋ちゃんもここで寝ていけばいいしな」と微笑んだ。

「うん!ありがとう、よかったね!くも」
椋は、家に居るよりここに居る事がとても快適に思えた。
そして、くもの横で歌を歌っていた。

「むくちゃん、綺麗な声だね」
強志は、椋の笑顔とその声に自分が行動した事を嬉しく思い、
その声は深く心に刻まれた。

朝方、くもは大きな声で鳴きおしっこを漏らすと、
静かに息を引き取った。
ありがとう!
とくもの声が聞こえた気がしながら、
寝る事もしないでズッーと傍に居て話しかけていた椋は、
その最後の鳴き声と共に声を出して大泣きした。

子供である子供らしく耐えていた思いが全て溢れ出し、
くもに覆い被さりその涙はくもの毛を濡らしていた。

強志は隣の部屋から椋の泣き声と共に目覚め、
急いで椋の居る部屋に入って行った。

「むくちゃん・・・。」
声をかけるとゆっくりと体を起こし涙で濡れた顔を向けながら
「くもはね、死んじゃったよ。
ありがとうって言ってた、おにいちゃんありがとう、
くもは最後にこんな暖かいとこで死ねたから、
きっと幸せだよね、うわっーん」
と泣きながらうつ伏せた。

強志の後ろに両親が立っていた。
1人っ子の強志が連れてきた可愛らしい女の子が、
泣き伏せている様子を見て思わずもらい泣きをした両親は、
強志を後ろから押して次にやらないといけない事を指示した。

動物用の火葬場は、
そんなに近くにはなかったが強志の両親が探し連れて行った。
「おにいちゃんの、おとうさんとおかあさん優しいね、いいなぁ!」
心の底から感じた事を素直に告げた。

椋は、自身の閉ざした心を強志の家では、
まるで強志の妹の様にしてくれたのか、
解き放たれた心で良く遊びに来ていた、
が、数年もすると強志は、引っ越す事になってしまったのだ、
椋は既に小学校も卒業で強志は既に20歳になっていた。

「椋ちゃん、寂しくなるけど頑張ってな、あの詩はいいと思うよ」
妹の様に大迫家に入り浸り、
絵を描いては強志が評価してみるみる内に上達して行くその絵を
大迫家の壁に額に入れて飾っていたくらいだった。

椋は、泣かなかった。
「何かあったらこれを開けてみるといい」
そお言われて手にした綺麗なお守りを握り締めた。