弥生は、迷っていた。
坊主頭で顎髭の男は、段々と執拗に半ば強引に誘いを掛けてくるようになっていた。
強引な男に女性は弱いなどと本気で思っているのか、
1度一緒に、出かければ何とかなると思っていたのか?
弥生は、まったくのタイプではなかった。
しかしそれは外見だけの話であって、接触が多ければ、
自分のいいところを見せられると優しいところに女性は引かれるなどとも思い、
気に入った女性にアタックしていくのだろう。
だが、大抵の女性は気のない相手にはまず接触を喜ばないから、
何度、誘いを掛けてもハッキリ断るのだろうが、断れない女性も確かに多いのだろう、
1度だけならいいかなぁなどと誘われて、気が付いたら何でこの人と付き合ったのだろうと、
時と共にその思いは強くなっていく。
弥生も、断ることが出来ない性格だったのだろう。
「妹さんと俺たち2人で、遊びに行こうよ。」何度となく、言われると行かないといけないのかなぁと、
暗示の様にもなって行く「どうしよう、高価なものまで贈られて・・・。」
別に、物が欲しかった訳でもない。
その、ブランド品のバッグを前にして長い間ベットにもたれ悩んでいた。
「お姉ちゃん」中々部屋から出てこない弥生の様子を見に来たかすみは、姉の部屋に入ってきた。
「如何したの、そんなに神妙な顔して」と、弥生の顔を伺った。
「ううん!、別に・・・」弥生は、軽く首を振った。
「最近、あの人こないねぇー、もしかして・・・。」
「あの人?」弥生は、誰のことなのかと顔を上げるとかすみを見た。
「たまにしかこない、可愛らしい男の人よ?何となく判るんだよねー!お姉ちゃんタイプでしょう」とうれしそうに、
弥生の返事を待った。
「誰よ!」弥生は、誰だか判っていたが素直には答えなくなかった。
「いいの いいの、どうせちゃんとした彼女が居て幸せだと思うよ。」と、
かすみは姉の本音を聞きだそうとしてわざと、動揺させようとした。
「何で、そんなこと判るのよ!」弥生は、
かすみのその言葉に誘い出された事に気付かず
「聞いてみないと判らないじゃないの?」と言ってしまった。
「聞いてみるの?」かすみは、瞳孔を大きくして投げかけると
「まさかねー、お姉ちゃんには聞けないよ!」とハッキリ言った。
「じゃあ、かすみは聞けるの?」と反撃した。
「いいの、私が、それを聞いて彼女居なくてね、アタックしてもいの?」
かすみも、悪くない人だよなと思っていたことを告げてるようにニコニコしながら弥生を見ると弥生は、
意外と行動的な妹ならそうしそうで余計なことは言えなかった。
話を変えようと、
無意識に「あのさ、いつもの坊主頭さんがね、かすみも一緒に4人で遊びに行こうよって、何度も誘われてるのどう?」
「それで、最近へこんでたの?」とかすみは、姉の元気のない様子が判った。
「その、バックも貰っちゃったしね・・・。嫌なら、それ返して断ればいいんじゃない。」と簡単に答えたが、
姉の弥生は優しいから嫌なことでも引き受けるところがあることを、かすみは良く知っていた。
「それができたらね・・・。」と俯いて「1度くらいならいいかなぁと・・・ね、かすみも来てくれる?」
「もしだよ、その一度が大変なことになったら・・・。」かすみは、良からぬ事を思った。
「大変な事って?」弥生は、薄っすらと判ってはいても「まさか、だよね」と思ったが、
男の中には手を付ければ自分の物だなんと、女性を物として思っている者も居るから、
これまた、厄介な事で、まさに男と女の不思議な関係だろう。
かすみは「いつ?考えてみるね」そー言って部屋から出て行った。
あーあ、年も明けてお正月からこんなんじゃ、今年は、最悪かもなーと、1人になった部屋で小さく呟くとそのまま横に寝そべった。