風と香りの中で 45

式には、綺麗な着物姿の女性が多く、中にはドレス姿や、スーツ姿の女性も居てむしろそちらの方が目立っていた。

その中に大森が告白する女性がいたのだった。
沢田が見つけると大森に告げた「来てるぞ!」「何処?」と辺りを見渡した。
「あそこの、大勢居る中に居るだろ」何にしても傘が邪魔してよく見えなかったのだ。

大森は、居なかったら居ないでいいや!何て、弱気の気持ちもあったのかもしれない、
だから、見えない!それで自身に納得させる口実にもなるのかもと・・・。
だが、沢田は、大森を横に連れてその女性の近くまで寄っていった。

「いた!」大森は、急に心臓の鼓動が早くなり、緊張間際で歩みが遅くなった。
が、その女性にぴったりと横に一人の男性がくっ付いている「ん!」沢田は、感ずいたのか。

「りょうちゃん、良く見てみろ」と小さな声で大森に「あれ、あれ!」と、
顎をしゃくり「良く見てみろ」と、大森に感ずかせようとした。

沢田は、2人の近くまで行って様子を伺いに行った。
これも、りょうちゃんのためだしな。
「やっぱりか!りょうちゃん、告白の前に撃沈だな」と、
大森を見ながら近くまで来て「行こうか」と大勢の人達が入って行く体育館に向かった。

「どうゆう事だよ」大森は、得た情報も言わずに行ってしまった、沢田の後を追いながら呟いた。
大森涼太、告白の前に撃沈などと新聞の記事にもならなかった。

風と香りの中で 44

昨夜から降り出した雨は、止む事も無く降り続けていた。

雨の成人式になったと、朝のニュースではどのチャンネルも全国の様子を流してた
今年の成人数は198万人だとそれが多いのか少ないのかなんて、星一にはどうでもよかった
どうやら雨が降ってるのはこの地域だけのようで、寒い一日になるなと思いながら大森が告白する日だと、
その結果が楽しみでもあった。
「よし!」と昨日の内に買っておいた、木材とそれを削る道具を袋から取り出した。

何の心境からか星一は、木彫りを始める事にしていた。
それは、加奈の影響も有ったのか何かを作る事それはいいことだと、
それで選んだ木彫りは、学生時代に美術の時間に作くった木彫りの物入れを褒められ長い事教室に展示されてた、
それがそのままの部屋にある机に置いてありその中には、加奈から貰った人形も入っている。

結局加奈に電話してもどうやら忙しく中々繋がらない、
寮では、電話は寮生皆の共有だから電話の相手も判らず加奈の呼び出しもうまく行かない。

一度、加奈から電話が有ったが星一は、留守にしていた。
「すれ違いが多いなー」星一は、これもと・・・。
勝手な自分の都合のいい判断して納得させていたのかもしれない
「さて、何を彫るか」と、モデルになる対象物を探しこれがいいなと、
写真立ての中に写っている柴犬を手にとって見た。

星一が、まだ幼い時、小早川家の一員であったナナは、家族に良くなついていた。

写真の中には、星一の横にきりっとした姿勢で座っている、小さな星一はその横で笑っていた。
何故だか、それを父親のアルバムで見つけたとき、その一枚だけ取り外し飾っていたのだ。

「さて、何処から削る!」と呟きながら最初の一彫りするとその後はスムーズに彫れて行ったが、
途中経過は一人大笑いし「何だこれは!」とベットに横たわってしまった。

が、眠る事も無く、加奈に会えないならば、次に手紙を書くしかないとその内容を考えた。

木彫りもこの手紙の苦手な星一が、気晴らしにホームセンターで、
便箋を買いに行ったときに決めた物だったから、
本題の手紙を今日仕上げないといけなかった。

苦手な物に目を背けるのは、多くの人たちの傾向だろう。
「なんて書けばいい!さよなら・・・。」あまりにもあっさりしすぎか、
「いろいろ、お世話になりました」なんか、やっぱりおかしいぞと、
星一は頭の中で、多くの言葉が巡るがしっくりこなかった。

考え過ぎでいつの間にか、眠りに入るまでに時間も掛からず目を閉じると同時に深い眠りに入って行った。

風と香りの中で 43

「すいません、せっかく紹介して貰ったのに
こんな形で連絡しなくちゃいけないことを・・・申し訳ないです。」
星一は、先輩に可奈とは別れると電話していた。

受話器の向こうから
「んー、そうか、俺の彼女が上手くいってるみたいだって言ってたけど、
家族にも会わせたとか聞いたぞ!
まあ、せいいちの事だから、俺がとやかく言うことでもないだろ、如何する、
まだ、断りの連絡してないいんだろ、彼女の方から言うよう言っといてやろうか。」

先輩は、気を使ってくれたが星一は、
「自分で・・・・言います。」

少し、迷いながらもそれは可奈を、もっと傷つけることだと、
だが、星一は、可奈の満面な笑顔で笑ってる時の顔を思い浮かべると、
何か上から重圧をかけられてるように身動きも出来なかった。

星一には、それを跳ね返すだけの力を与えてくれる事情が必要な事は判っていた。

雷に打たれたことはなかったけれど、
それくらいの衝撃と胸の高鳴りと吸い込まれそうなほどの瞳が、
可奈の悲しみを受けても消せると、
それが自分の力になるんじゃないかと思えた。

だからだろう、交際を申し込んでも無理かも知れないが、
星一は、その一歩を踏み出さなければいけなかった。

風と香りの中で 42

「理沙、如何したのよ 智と何かあったの?」
弥生は、理沙の後から小走りで追いかけたずねたが、
「やよには、関係ないことなの!」まだその、気の高振りが残っていたのか、
その言葉はきつく弥生は、余計と気になってしまった。

「もう、私と、智とは何の関係もない、唯のボーイフレンドだよ、
でも、りさは、いつまでも友達だもの、りさの、あんな態度みたこともないし、
心配なの、何があったの?」
弥生は、下駄箱の前でりさが、上履きに替えている横で尋ねていた。

「今度、話す。多分、今日は呼び出しがあると思うし・・・。」
りさは、別にやけになっていた訳でもない、
智彦の顔を見たとたん、あのとき知る人も居なく寂しい思いをした悲しみと置き去りにされた心が、
そして、清瀬澄江と出会い考えたくもない答えを澄江が教えてくれたときの、なんとも自分が惨めに思えたのだった。

その気持ちが、りさの隠れた気性を現した。
真理子は、「りさっち、今日 呼び出しにあうって事は、判ってたの?」弥生の、横から尋ねた。
「そうだよ、いいの・・・。今日は、ね」と、理沙は、自分で納得しながらいって、さっさっと行ってしまった。
残された弥生と、真理子に皆が集まってきて、中の誰かが「変わるもんなのね!」
さらに、事情も知らない人たちの声はまちまちだった。

「振られた、腹いせ」「騙されたのかなぁ」「何か、されたとか・・・。」と、
下駄箱の前では理沙の事で賑やかな一大事にもなった。

智彦は、平手打ちの痛みより胸の痛みのほうがきつかった。
理沙が、あんなに怒っているとは知らなかったのと、
騙した事の、罪悪感がこんな形になって帰ってくることは、思ってもいなかったのだ、
しかし、もっと重大な智彦自身の人生をも変えてしまう事があるとは、この時は、誰も知る由もなかった。

「だから、ちゃんと行かなかったから、連れて帰って来て、その時謝ってれば良かったんだろうに、大山が悪いよ。」
と仲間の一人が呟くように言った。
「・・・・・。」智彦は、何も言わずに校舎にはいって行った。

風と香りの中で 41

学校に入るなり、当然の事なのだが、理沙を知っている同級生、
いや!同級生でなくてもその容姿を見ると、驚いた。

それは、理沙に、凄く合っていて背が高いのが更に目立ってしまった。
誰もが「美高女」と言ったかどうかは知らないけど・・・。
当然、男子は、誰だ!と判っていても第一声はそう言わせてしまった。

「とも、あれ!伊吹だよなー。女子って変わるもんだな。」
智彦は、理沙を見るなりどうしたのかその驚きと、
りさがりさで無い容姿に「可愛いなー!」と言わせてしまった。

智彦は、クリスマスの件の事も有ったが理沙は、まだ自分に好意があるだろうと、
その愚かな恥と自惚れは、数分後にものの見事に折れてしまうのだった。

3人の後から智彦は、弥生と呼びとめた。
すると3人は足を止め立ち止まり振り返った。

そして智彦は弥生には用が無く、理沙に向かって「ごめんな!急用でいけなかったよ!」と嘘を付いた。

今の理沙にはそれ自体通用しない事も知らずに智彦は、理沙の怒りを呼び覚ましてしまった。

何も言わなければ何も無かっただろうに、理沙は、数歩歩き智彦の前に来ると、
同時に智彦の左頬に理沙の平手が、凄い速さと音で智彦が驚く間もなく見事に当たり、
「しょーもない男やわ!」と言って振り返ると「行こう!」と2人に言って歩き出した。

もちろん弥生も、真理子もその驚きは、理沙の容姿が変わってしまったことよりも驚いた。
特に弥生は、智彦を呆然と見つめた。

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