「風と香りの中で」カテゴリーアーカイブ

風と香りの中で 20

暫くして理沙が、手洗いの扉を開けると部屋の中は薄暗くなって、
そろそろ開始の時間に近付いていたのか、人が増えてるのが、空いているテーブルが殆どないので分った。

理沙は、自分の居たテーブルを探したが良く分らなく、困っている様子を見ていたのか先程の女性が近付き、
案内されると理沙の居たテーブルには、智彦は居なく知らない女性が、
対面に座って退屈そうに煙草を吸っては、辺りを見渡していたのが見えた。

「えっ!誰だろう?」知るわけもない、案内の女性が何も言わず、ここよ!と長い腕をさし伸ばした。
理沙も、何も言わず軽く会釈をして、恐る恐る自分の場所にその女性をチラリと見ながら席に付いた。

何か落ち着かない理沙は、智彦が来ないことに怒りさえ覚えた。
「本当に、何してんの!」悲しくなりそうな気持ちと、
不安な気持ちは隠せないくらい沈みかけてた時に「うちな、清瀬澄江ちゅうねん」と、
いきなり話しかけてきたのは自己紹介だった。

化粧が上手なのか明らかに理沙より年上だろう女性は、
まん丸な大きめの目に髪は栗色で、にっこりと笑った口元に右側だけ笑窪が出来ていた。

それが、その女性の可愛らしさを出していのだろう、
「ここええやろ・・。」と、理沙は、澄江を不思議な顔をして見つめた。

「どないしたん、何か、うちの顔についてはるか?」大阪の人だ!、
理沙は他の地域の方言を聞くのは、修学旅行の九州以来、関西方面は、初めてだった。

どう返したらいいんだろう?と迷っていると、
「幾つなん?」と聞かれ本当の年を言っていいんだろうかと迷いながら思わず「20歳です。」と、嘘を言ってしまった。

「あっ!私は伊吹理沙と言います。」と頭を下げた。
「うちな、24歳のもうおばはんや、よろしくな」と微笑み、
その笑窪がかもし出す可愛さは、とてもおばさんには見えず、理沙が、首をかしげると、
同時にパーティの始まりの挨拶が始まった。

風と香りの中で 19

目印が良かったのか、理沙は、あまり迷うこともなく目的地に着くことが出来た。

雑居ビルの1Fに有ったその場所は元々何の店だか分らなく扉の前には面長に黒縁の眼鏡を掛け長身にスーツ姿の男性と、
白地に大きな椿の柄の入ったフレアワンピースに赤いカーディガンを羽織り赤いヒールを履いた女性が立っていた。

理沙は、ゆっくりと近付きバックからチケットを取り出し、その女性に差し出した。
女性は、チケットを受け取り「ここよ」と微笑んだ。

男は近付き、遠藤ですと名乗り傍らにいたその女性に中に案内するように促し、
理沙の背中を押してどうぞ!と言った。

理沙は、遠藤に「大山智彦君はきてますか?」と尋ね、
遠藤は少し考えると思い当たる人物が分ったのか、まだ、来てないなと答えた。
「そうですか・・・。」

残念そうに理沙は、女性に案内されて中へと入っていった。
中に入ると最初にクリスマスツリーが幾つか置いてあるのが目に付き、
小さく流れてるクリスマスの曲を聴くと、気持ちが向上した。

既に数人の男女がいた。中を見渡しながら歩き、右奥の4人テーブルに誰もいないのを見つけ、
「あそこでいいですか?」と指をさしながらその女性に言って、
いいわよ!との返事でそそくさにテーブルまで歩いた。

何かこうゆうのって始めてだよね。
と自身に問いかけながら奥側の椅子にバックを置いてその横に腰掛けた。
智君、遅いよ何してるんだろう、理沙は、智彦が始めから来ないつもりなのを知る由もなく唯、待つことを心がけて、
目に付いた数十種類の料理や、飲み物はまさにパーティの雰囲気があり、その奥には厨房らしき部屋が有り理沙は驚いた。

智彦が何故こんな、パーティーのチケットを持っていたのか、理沙は、考えたが判る筈もなく時間が経つにつれて、
緊張感が体全身に出てくるとお手洗いの看板を見つけ、
戻ってきたら智彦が来てるだろう期待をしながら、席を立った。

風と香りの中で 18

既に、3時間近くこうして、長男の幸一を除いた小早川家の4人と可奈は、
まるで身内のように気さくに気軽に過ごしていた、
只、星一だけは時折、ハラハラしていた事は誰も知らなかった。

「そろそろ・・・」と星一が言いかけると、
母親は、「あら、帰っちゃうの?泊まっていかないの?」と可奈のほうを見て
「てっきり、わたしは泊まっていくもんだと思ってたんだよ」「そうすればいい」と父親も口を挟んだ、
可奈は、星一の出方を見ていたのか何も言わず迷ってる様子をしていた。

「駄目だよ!かなは、明日早いから、無理だよ。」
と可奈を見て「なあ!」と帰る事を促してるようだった星一に、
「えっ!明日・・・何か言ようとしたが、そうなんです、残念だなぁ」と俯いた。
「そうゆう事だから、また今度、連れてきた時にしよう」

ほっとした気持ちと、何故だか少し寂しい気持ちも同時に胸の内で沸き起こっていた。
可奈、ごめんな!今の自分の中に、もう1人の自分が居るようで何かはっきりとした自分の気持ちが、自分でも判らないんだ。

確かに出会いは、どんな形であっても出会いだよな、でも・・・。
言葉にしない、今の心境を自身に言いながら家を出て、所々に輝く星を見つめると、
可奈!オリオン座って判るかと問いかけた。
    

風と香りの中で 17

寮生活の可奈には、久しぶりの家族的な雰囲気がうれしかったのか、
自分が看護婦になると決めた経緯を、

一生懸命に話してると星一の父親は、
何度も頷きながら可奈の話を熱心に聞いていた。

「仕事には、もう、慣れたのかい きつくはないのかのう?」

看護婦の仕事が、
どんなものなのか分かっているのか「大変なんだってのう。」と言って、
ビールを1口飲んで星一に

「こうゆう優しい気持ちのお嬢さんなら、お前も幸せだのう」
と星一を見たが、星一は、席を立った。

リビングに行くとタバコを吸い始め、何か、流れがまずくないか、
自分はまだ結婚なんて考えてもいないし、それに可奈の事だって、
まだ、2ヶ月たらずの付き合いじゃないか・・・。

キッチンからは可奈が
「私は、多くの人の役に立てれば、大変なんて思はないし、
自分に合ってる仕事だと思ってます」と、
しっかりした口調で話してるのが聞こえた。

おいおい!自分を売り込んでるのかと星一が思ってると

「偉い!お嬢さんは、天使じゃ・・・。」と父親が、
うれしそうな声で言ったのが聞こえた。

そして、何度も頷いていた。

「辛い事があったら、遠慮なくいつでも来ていいからね、

せいなんか居なくてもだよ」と母親も、
可奈に気遣うように言っていた。

可奈は、遠く親元から離れ寮生活をしながら、
見習いから、準・正看護婦へと進む道程を歩いていた。

やはり、大抵の人は応援するだろう
母親が、せい何してるのと呼ぶと、星一は戻ってきた。

「あんたね、こんな優しく、素朴な女性はそんなに居ないよ!」と、

星一は何か凄く追い込まれてる気がした。
だが可奈は、どうなんだとは言わずに可奈を見つめた。

その視線に気付いた可奈は、星一を見るとうれしそうに微笑んだ。
ん!この時、星一は、可奈を連れて来た事が本当に良くなかったと
、確信した。

「えっ!お兄ちゃん結婚するの?」と妹の瑠璃子は、

皆の話が何かそんな方向に言ってる様に思えたのかそう言って尋ねた。

「まさか、まだそこまでの話しじゃあないぞ!」

いいタイミングだと、思いすかさず答えた。

「まだ、兄貴だって結婚してないのに・・・。

弟の俺が先に結婚する訳にはいかないだろ?」
と瑠璃子を諭すように続けた。

「別にね、家はそんなことは拘らないからね」と母親が言うと、
「ああ!まあ2人で決めればいいことじゃのう」と、父親が赤ら顔で言った。

風と香りの中で 16

駐車場から、両手一杯に荷物を持った、星一の後から可奈は付いて来てた。
「ひとつ、持とうか」と近付くと左手に可奈は、手を掛けた。
「いいよ!」と小さく振り払った袋の中からレモンが、1つ転げ落ちた。

「あっ!」慌てて拾い上げるとそのまま、鼻に近付け良い匂いと息を吸って、星一のの鼻にも近付けた。
「良い匂いでしょ」と言って、微笑んだ。

「私、好きだなぁ、この香り、酸味の利いたすっぱい匂いが、何とかの味とか言うんだよね」と、
星一に尋ねたが、「知らない、何それ?」「ふーん・・・!」可奈は、星一の顔を覗きこんだ。

いよいよだ!家の前迄来ると、星一は、初めて家族にに会わせる彼女を、
家の者はどんな風に向かへるのかと、不安と心配とが、一気に押し寄せてきた。

「ここ!」と可奈は、入って行くと「こんにちわー、ただいま」と、
まさに女の子らしく何の躊躇もせず玄関の扉を開けた。
「おい!」と、止める間もなく一瞬の事だった。

中から母親が「あら!」と出て来て、
うれしそうに2人を見て「可奈さんね、良く来てくれたね、さあ,入って外は寒かったでしょう」
そー言って中に招き入れるとリビングの方に消えていった。

星一は、両手に荷物を持ったまま、まるで悪戯っ子が立たされているかのように玄関先に呆然として立ち尽くしてた。

「あはは」と妹の瑠璃子が笑いながら近付き、
「ハイ!」と手を出し荷物を1つ受け取って「お兄ちゃん、とうとう連れてきたんだね、今まで一度も連れて来なかったのにね」
そお言ってキッチンの方に行ってしまった。

星一は、クリスマスより一大行事になってないかと思いながらキッチンに行って、
荷物を置くと、すぐ、リビングに入っていった。

すでに可奈は、ソファーに座っていて「あっ!これ」と先程のレモンをバックから取り出し、星一に渡した。
星一は、そのままテーブルの上に置いた。

すると、部屋中に甘酸っぱい香りが漂い、なんて、そんなドラマみたいな事もなく。
可奈が、「やさしい、お母さんね」と微笑んだが、星一は、「ん!、お母さん、おかしいよそれ」と可奈の、横に座った。
「なんで?」すかさず返した。

「だってそうだろ、まだ、身内でもないのに・・・。」
「だって、せいちゃんのお母さんでしょ」
「そうだよ、可奈の親ではないよな」星一は、無表情で可奈を見た。

「じゃー、なんて呼べばいいの?」と星一の返事を待った。
「んー!」と眉間に皺を寄せソファーに持たれかけ、天井を見付め考えてると母親が、
2人の会話が聞こえていたのだろう「どうしたの?」と、入って来て可奈にエプロンを渡した。

何でも言いやと、星一は、自分の部屋に行ってしまった。
この状況まずくないか?可奈を連れてきた事を、少し後悔しながら、ベットに横になると、
いつの間にか眠ってしまい、暗い闇の中から聞こえてきたチャリン・チャリンと金属音が響き、
キラリと光るスプーンが1つ目に付くと、そこにあのウエイトレスが立っていた。

満面の笑みを浮かべ、白く綺麗な手がスッーと差し伸べられてきた。
自分の鼓動が大きく聞こえるくらい、不安と、ときめきと、喜びが何故か、自然にその手をとると、
確かに感じた感触で目が覚めると可奈が、ベットの横で星一の手を握っていた。